American Honey / アメリカン・ハニー ~広大なアメリカを旅する儚い青春

by - 4/24/2017


貧しい家庭で幼い弟妹の面倒をみるスター(Sasha Lane)が、お金を稼ぐために、バンで移動しながらモーテルで生活し、雑誌の定期購読を売る商売をするティーンエイジャーたちのグループに入り、アメリカをまわる青春ロードムービー。10代の中に入っていく目線がラリー・クラークっぽくて完全に好み。露出した肌だったり、煙、花火、スラングばかりの他愛のない会話、大音量のラップ・ミュージック。居場所のない10代たちが集まった擬似家族のような仲間。朝から安そうなウイスキーをボトルで飲んでハッパすって、稼ぎも自分の手元にどれくらい入っているのかよくわからないし、これを永遠に続けられるとは思えないから明るい未来はなさそうで、外側から見るとかわいそうという視線になるんだけど、内側から見るととても温かくて居心地が良さそう。Rihannaの「We Found Love」を大音量でかけて、作業員の男たちの前で女の子たちが踊り狂うところが最高だった。あと、いつもラップばっかり聴いてるのに、Lady Antebellumの「American Honey」合唱しちゃうのがかわいかった。題名の曲だから練習したのかもだけど。広いアメリカの土地を音楽で旅する映画という感じ。

参考:映画『American Honey』のキャスティングを、アンドレア・アーノルド監督が語る | i-D

スターにとって、この旅仲間に入ったのはお金を稼ぐことが目的だけど、結果的に彼女の失われた青春のためになった。家では頼りにされて自分の時間が持てなかった。そこから出て、ひとりの10代の女の子として生きることができる。そんなときに出会ったのが、ジェイク(Shia LaBeouf)だった。他の男の子たちはミュージシャンやスケーター、筋肉自慢って感じのなかで、個性的で浮き出ているジェイク。口がうまくて、この仲間で1番の稼ぎ頭。仲間たちをまとめているクリスタル(Riley Keough)からの信頼も厚い。ジェイクはスターの教育係として一緒に訪問販売をまわることになった。スターにとっては仕事というよりもジェイクと一緒にいる時間が楽しいという様子。クリスタルから稼ぎが少ないと呼び出されて叱られてもジェイクとの関係に夢中なスターには全然痛くない。スターは10代特有の怖いもの知らずさか、知らない男の車によく乗る。見てるこっちがはらはらする。ジェイクもそう思っていたのかも。求め合うけどすれ違ってしまう2人。スターの純粋で熱い感情が、美しい自然の中で燃え上がる映像がきれいだった。最後はカメを湖?に帰して空には蛍が飛んでた。意味深だけど「生きる」という風に受け取った。


スターはカットニスを思わせるキャラクター。自然に優しくて、幼い家族のことを一番に想っていて、そのための自己犠牲は問わない。ジェニファー・ローレンスが寒い地域で苦労して生きる姉なら、サッシャ・レーンは暑い地域の姉。薄いけどとがった唇がかわいい。横顔美人なところもジェニファー・ローレンスに通じるところがある。


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