X+Y / A Brilliant Young Mind / 僕と世界の方程式 ~天才児の孤独と苦悩

by - 2/25/2016


自閉症スペクトラムで人間関係が難しい子の話を子どもの視点にもなって描いているところがよかった。彼が見る世界はライトの光が眩しく輝いて、まわりの音ががやがやが大きく聴こえる。自分でも自分の人間関係での不器用さを知っている。その困難を抱えながら、思春期的悩みにもぶつかるし、彼はまわりの環境や人間に恵まれていたからこの映画はいい雰囲気で終わったけど、日常は大変なものだと思う。

幼いときに病院で「何が好きなの?」ときかれて「パターン」と答えたネイサン。しばらくして、図形へのこだわりと大人の母親をも凌ぐ数学の知能に気づき、飛び級で数学を教えてもらうよう先生に依頼した。それからネイサンの目標は国際数学オリンピックになった。

数学オリンピックのイギリス代表候補に選ばれたネイサン(Asa Butterfield)は、台北での合宿へ参加する。ひとりで海外へ行くことにも、母親や先生との別れもすごく淡白。そして、イギリスの宿敵中国チームの生徒とペアになるときも、挨拶の握手ができない。そのペアの生徒が中国チームの先生の姪の女の子チャン・メイ(Jo Yang)。彼女はペアとしてネイサンに夜市や公園での太極拳などを案内する。そしてネイサンは行く前に覚えた中国語でコミュニケーションを試みる。少しずつ関係が深まっていく2人。また、イギリスチームの男の子たちと馴染めないネイサンは、唯一の女の子レベッカ(Alexa Davies)とピアノを通して関係を近づけていく(エイサっぷが両手に花という、ちょっと都合のよい設定なんだけど)。


また、ネイサンはこの合宿で、自分と同じようにずば抜けた才能を持つが人間関係が難しい自閉症スペクトラムの子と出会う。ルーク(Jake Davies)もまた、自分で自分の生きづらさを知っていて、「この病気がわかったとき、大人に何て言われた?特別な才能(gifted)?そんなの欲しくなかった。別に数学が好きでやってるわけじゃない」のようなことをと言う。ルークは、コメディ(モンティ・パイソン)動画を見て覚えたネタでみんなを笑わせようとするんだけど、空気が読めないことで、失敗してしまう。それ以外にも思ったことをそのまま言ってしまったりするので同年代の数学仲間にうまく馴染めないでいた。ネイサンもまた、「みんなより頭が良すぎることでいじめられないところがいい」と言っていたように、自分の特別さに生きにくさを感じていたと思う。だけど、ルークと気持ちを通わせることができない。

ネイサンは父親とはつながりを築いていたが、父親は事故で亡くなってしまった。だから母親は、肌を触れ合わせたくても、ネイサンはそれを拒むからできないし、「愛している」って言葉の意味も理解してもらえないなかで、孤独にネイサンを育ててきた。それでもネイサンをずっと愛して、彼の幸せを願っている。ネイサンに「好き」って気もちを説明するときに、「アイスクリームよりも好き」っていうのがかわいい。でも、ネイサンは「数学よりも好きなものはない」って言ってしまう。ネイサンは父親の喪失もうまく処理できていなくて、そのひっかかりと新たな出会いで芽生えた感情を手がかりに、愛情について理解していく。ネイサンが母親に笑顔を見せたところが号泣。エイサ・バターフィールドは、見た目の特殊さでだいぶ得をしている俳優だと思っていたけど、やっぱりちゃんと演技もうまい子。

あと、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』で天才数学者アラン・チューリングの幼少期を演じたAlex Lawtherが、逆に天才の孤独を理解できずにからかう男の子を演じていて、こういう役もできるのかとびっくりした。下の動画でも、好奇心旺盛で怖いもの知らずな感じがしたから、この子は役者向きだね。生え際だけ守ってほしい。

若い子たちが異国の謎食べ物に挑戦する動画。たまらん。




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